2024-01-01から1年間の記事一覧

2024年男性学関連イベント・講座まとめ

2024年に行われた男性学やメンズリブ、男らしさ関連の(単発)イベントをまとめました。私が見つけられた範囲です。なお、メンズリブの例会は含めていません。 2024年12月23日 小埜功貴大学院生による連続講演 第1回「リベラルアーツとしての男性学」(主催…

逆を向くフェミニズムと男性学の行方

今後フェミニズムと男性学はそれぞれ逆方向へ行くだろうと予想している。 フェミニズムは「個人的なことは政治的なこと」だと性差別構造を明らかにしてきたが、もう第四波の限界も見えてきて、オンラインの政治ではマイノリティ女性への差別に加担しかねない…

済東鉄腸×周司あきらトークイベント「どうすれば男性を「豊か」にできるのか?──自罰的な男性学を超えて」開催します。

こんにちは、周司あきらです。済東鉄腸(さいとう てっちょう)さんの新刊『クソッタレな俺をマシにするための生活革命』の刊行を記念したトークイベントに、私もお声かけいただきました。三鷹のユニテで開催します。 unite-books.shop 【日時】 2024年12月8…

性別適合後に「普遍論争」を拓き、引き裂かれる経験

初出:「周司あきらの自省録」2022年2月2日 読了時間: 7分 トランスジェンダーとしての体験と、中世スコラ哲学における「普遍論争」の話をしよう。 ※頼さんの邦訳「社会的に構築された概念としての性別(Jeffrey Lockhartさんのブログ記事"sex as a social co…

『異性愛という悲劇』読書メモ

レズビアンでありフェミニストの著者ジェーン・ウォードの本"The Tragedy of Heterosexuality”が、『異性愛という悲劇』というタイトルで邦訳されました。 www.ohtabooks.com 表紙がチカチカするほどのビビッドピンクなのですが、カバーを外すと原著に近いシ…

トランス男性の「社会的弱者になりかねない不安」を考える

ホルモン治療への葛藤を綴った、トランス男性のブログを読んだ。 【FTM】ホルモン治療開始をめぐる葛藤③「社会的弱者になりかねないことへの不安?」 ameblo.jp 言おうとしていることはすごくわかる気がする。 望み通り社会的・身体的に男性になれたとして、…

2024年おつかれさまでした。

あと2ヶ月後には2025年です。こわっ。 寒くなってきたので、気分的には今年がもう終わってしまった感覚です。なのでこのブログを書くことにしました。2024年、お疲れさまでした。 今気づいたのですが、Hatena Blogを始めたのは2024年1月からだったようです…

『季刊セクシュアリティNo.118』に寄稿しました。

性教育に長年携わっている、”人間と性”教育研究協議会(性教協)の機関誌『季刊セクシュアリティNo.118』が2024年10月に発売です。 テーマは、「男子ってなんでそうなの?どうしたらいいの?」。男性の性が特集になるのは、2006年以来3度目だそうです。 www.…

『モンゴル帝国 草原のダイナミズムと女たち』読書メモ

ウランバートルへ発つ朝、成田空港の書店でゲット。ウランバートル市内と東ゴビ砂漠は非常に充実していたので本を読む気は起きず、主に空港で読んだ。 楊海英『モンゴル帝国 草原のダイナミズムと女たち』講談社現在新書、2024年7月 bookclub.kodansha.co.jp…

『知的障害のある成人男性の性的欲求と支援』読書メモ

著者は、知的障害のある成人に対する性教育を実施しているボランティア団体のメンバーである石黒慶太さん。博士論文が元となり、書籍化に至ったそう。全7章(+序章と終章)のうち、第1章から第5章は具体的なエピソードの記述と、それへの考察が中心となる。…

トーマス・キューネ編『男の歴史』読書メモ

星乃治彦さんがドイツ語から邦訳した『男の歴史 市民社会と<男らしさ>の神話』は、トーマス・キューネの本という印象が強かったですが、全10章をそれぞれ別の人が執筆している一冊でした。10人分の論文(?)を一人で訳すのはなかなか大変そうです。1996年…

『バトラー入門』読書メモ

藤高和輝さんの『ノット・ライク・ディス』に続き、 akira-shuji.hatenablog.com 『バトラー入門』もめちゃくちゃ熱い。 ひたすら『ジェンダー・トラブル』を軸にバトラーの思想を追っていくので、他の著作も詳しく知りたかった読者は拍子抜けするかもしれな…

五月あかり&周司あきら対談まとめ

こんにちは、周司あきらです。 トランスジェンダーへのヘイト溢れるオンライン空間に飽き飽きしたところで、こちらの対談ブログでも読みますか? 五月あかり:都内のOL。いつの間にか生活が男性から女性になった人。性同一性は「無」。Aセクシュアル。 周司…

あかり&あきら対談「久しぶりに性別の話でもどう?」

久しぶりに、トランスジェンダーふたりの雑談です。 A:五月あかり(出生時に男性を割り当てられたが、現在は女性に埋もれて生きている。トランスジェンダー) B:周司あきら(出生時に女性を割り当てられたが、現在は男性をやっている。トランス男性) 【犬…

『トランスジェンダー入門』刊行から1年間のこと

2023年7月12日、ryuchellさんの訃報が流れてきた。 その2日後、集英社新書から私(周司あきら)と高井ゆと里さんの書いた『トランスジェンダー入門』が発売となった。 ryuchellさんに対する誹謗中傷には、トランスジェンダーの人々が浴びせられてきたのと同…

トランス男性へのルッキズム

トランスジェンダーへのバッシングが酷くなると、擁護する側も立派に「パスしている」トランスパーソンを提示したくなるらしい。他人の写真を勝手に使って「ほら、トランス男性はこんなにも男に見えますよ」と“トランス擁護”する行為はプライバシーの侵害な…

トランス差別の裏側ーーー男性性とペニス

『地平』(2024年8月)の「特集2:奪われるフェミニズム」を読んだ。 chiheisha.co.jp 菊地夏野さんがちらっと述べている「トランスヘイトの動きが、どうしてトランス女性に多く向かっているのか」(p.131)という問いは、フェミニズムの課題であるだけでな…

『男たちの意識革命』が記録するアメリカの男性解放運動

アンチフェミニズム的な男性運動やバックラッシュについて調べていて、朝日新聞の編集委員を務めていた下村満子さんの『男たちの意識革命』(『アメリカの男たちは、いま』)は抜群にいい資料だと感じました。 1970・80年代のアメリカの男性解放運動について…

男性学との距離

男性学とは、男性の当たり前を疑う学問、だと思う。 他の著名な研究者は異なる説明をしてきたけれど、少なくとも私はそんなふうに捉えている。 もともと、私は男性学という分野を遠い存在だと感じていた。というより、縁がなかった。女性学やフェミニズムの…

トランスジェンダー男性(FtM)の自伝の一人称調べ

タイトル通り、トランス男性(FtM)の自伝やエッセイの一人称を調べました。 すぐに確認できたのは、全部で14冊でした。記者・研究者・医師らのインタビューで成り立つ本は除外したので、意外と少ない。なお、一人で複数冊刊行している場合(虎井まさ衛さ…

『ロスジェネのすべて』読書メモ

雨宮処凛さんが同年代の4名と対談した『ロスジェネのすべて 格差、貧困、「戦争論」』を読みました。 ロスジェネのすべて – あけび書房 「ロスジェネ」は、1970年から1984年ごろに生まれ、バブル崩壊後の1993年〜2004年に学校卒業期を迎えて就職活動をおこ…

「男性性」概念の拡張

「男性性」とは何か。使用者によってバラバラなのが現状である。 男性性は、「masculinity」の訳語として「男らしさ」と同一視される機会が多く、例えば「覇権的(ヘゲモニック)な男性性(Hegemonic Masculinity)」という語を、「覇権的な男らしさ」と表記…

性的応対力という尺度【改】

他者を交えた性的関係において、「性的応対力」と呼べるような尺度が導入されると、もっと話がしやすいのになーと思うことがあります。これは、性愛感情や性的指向や性欲などとは直接的な関係のない、性の話です。これについて書いた前回のブログはとても大…

性的応対力という尺度

他者を交えた性的関係において、「性的応対力」と呼べるような尺度が導入されると、もっと話がしやすいのになーと思うことがあります。これは、性愛感情や性的指向や性欲などとは関係のない、性の話です。 性的応対力 ・・・自分が積極的に望むわけではなく…

ジュンク堂書店池袋本店で『トランスジェンダーQ&A』刊行記念フェア

ジュンク堂書店池袋本店5階で『いちばんやさしいアロマンティックやアセクシュアルのこと』(明石書店)×『トランスジェンダーQ&A』(青弓社)刊行記念フェアを開催中です(2024年6月2日現在)。 トークイベントも6月16日(日)14:00-15:30にあります。私は出演…

『ノット・ライク・ディス トランスジェンダーと身体の哲学』読書メモ

藤高和輝『ノット・ライク・ディス トランスジェンダーと身体の哲学』(以文社)を読みました。 www.ibunsha.co.jp 全編通して、置き去りにされてきたトランスジェンダーの蓄積の破片を拾い集める作品になっています。読んでいる最中は非常に胸が熱くなった…

『男性学基本論文集』読書メモ

2024年1月に刊行された『男性学基本論文集』(勁草書房)は、今の日本(の男性/男性学)に欠けている視点をたくさん含んだ論文集です。読んでいる期間、ずっと刺激的で幸せでした。 日本型男性学では、ついつい男性の非抑圧性や男らしさの話に終始してしま…

婚姻制度(異性婚)で男性が得る利益

フェミニズムでは、女性が婚姻制度のもとでいかに抑圧されているか言及されてきた。 例えば、 ・婚姻制度のせいで女が分断されている。妻である女性は守るべき「正しい女」扱いする一方で、それ以外の女(非婚の女、レズビアン、セックスワーカーなど)は「…

アンチフェミニズムな男性の女性認識

アンチフェミニズム的な男性が、女性(やフェミニズム)に対してどのような認識を持っているのか、簡易的な分類をした。そうした男性の中には、そもそもフェミニズムの意味を理解していないために、単に「女性がむかつく」といった八つ当たりを含んで意識形…

トランス男性とシス男性の「男らしさ」認識

トランスジェンダーの男性とシスジェンダーの男性では、「男らしさ」への認識が異なるように見受けられる。このあたりは、いずれきちんと調査されると良いのですが。 ・トランス男性の「古さ」 トランス男性(FtM)コミュニティにおいて、いまだに(肉体)労…