読書メモ『ゼロへ そこから先がオレの人生』

『ゼロへ そこから先がオレの人生』読んだ。

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この本は読む機会がなさそうと思っていたけれど、結局手に取った。

毎日新聞記者の著者が、ひとりのFtMとその周囲の人間を取材した記録。描かれる人物は「トランス男性」というより、「前略プロフィール」で「真のFtM」を探し求めた、ザ・FtMという感じ。


主人公の智輝は、「FtM狩り」と称して自分より「男らしくない」「中途半端な」FtMに暴力を振るって、傷害容疑で告訴された。

(私はFtM狩りされる側の人間だろうな、と思っていたので積極的に読む気がしなかったのです。)


FtMという集団内部における覇権と、社会全体におけるFtMの周縁化された男性性のありっぷりはズレてるよな、と感じた。


小学5年性の頃から手作りの偽チンを使っていた智輝が、留置所では偽チンを持ち込むことができなかったエピソードは、胸が痛い。まさしく幻肢痛のようだったのではないかな。


親族の対応で、印象的だったエピソードがある。

智輝に第二次性徴がはじまり、胸にラップを巻いて生活するようになった時、

「ラップがあっという間になくなることに気づいたおばあがある日、「最近、ラップがすぐになくなる」と言った。智輝は知らんぷりを決め込んだ。毎日4メートルほどのラップを使ったので、30メートルロールのラップは1週間でなくなった。おばあが何を思ったのかはわからなかったが、何も言わずにたくさんのラップを買い置きしてくれた。」(p143-144)